―美肌の大敵である「乾燥」ですが、肌が乾燥しているときは肌色がどんよりとくすんで見えるのですが、乾燥とくすみって関係があるのでしょうか?
十分な水分がある肌はふっくらしていてキメが整っている状態です。
そういう状態の肌は光があたったときに同じ方向にキレイに反射するので、明るく透明感に満ちた肌に見えます。
一方、乾燥している肌は水分が足りずにしぼんでしまっている状態。
そうすると光が乱反射したり影になる部分ができてしまったりと、くすんだように見えてしまいます。
女優さんやモデルさんを撮影するとき、たくさんの照明やレフ板を使って光をあてて肌を美しく演出しますよね。
それと同様、肌自身が「光」をうまく反射できるかどうかが肌を美しく見せるかどうかの決め手。
それが肌の水分量と関係しているのです。
乾燥している皮膚は光を美しく操ることができません。
―私は、冬に乾燥しすぎると口のまわりに粉をふいてしまうのですが、その「粉」って何物なのですか?
粉の正体は、はがれてしまった角層です。
皮脂や細胞間脂質が少なくなり肌が乾燥した状態になると、角層細胞がはがれて脱落しやすくなってしまいます。
そのため、衣類との摩擦や、かゆみの為に掻いたりすることにより、簡単に角層細胞がはがれ落ちてしまい、粉をふいたような状態になるのです。
乾燥や掻くことにより、肌のバリア機能が壊されると、痛みやかゆみを感じる「知覚神経」が肌の表面に向かってのびてきます。
そうすると、かゆみを感じやすくなってしまいます。
通常であれば、かゆみを感じることのない程度の刺激であっても、皮膚表面まで知覚神経がのびてしまった状態だと「かゆい」と感じてしまいます。
掻くことで知覚神経が伸びるとともに、さらに体内での複雑な反応によりさらに神経がのびやすい状態に陥ってしまい、結果「掻けば掻くほどかゆくなる」状態になってしまうのです。
そのため、まずは掻かないということが重要です。
無意識のうちについつい掻いてしまっている「掻き癖」がついている方が結構いらっしゃるので、「掻かない」と意識しないといけません。
―では、「かゆいな」と感じた時はどういう風に対処するのがいいでしょうか?
まずは保湿剤や処方されている薬があればそれを患部に優しく塗布します。
その後、掻いてしまいそうであれば、衣服などで覆うほうが良い場合もあります。
その際は素材に気を付けてください。化学繊維などでかゆみが悪化する場合があります。
特にアトピーの方なんかは、コットンでも織り方に工夫がなされていたり、縫い目のないものなど、肌への刺激が最小限になっているものもあるので、気になる方は一度調べてみてもいいかもしれません。
―乾燥によってかゆみが出た場合、皮膚科にいったほうがよいのでしょうか?
そうですね。
乾燥くらいでは必要はないかと思いますが、かゆみが出て、市販の保湿剤を塗っても改善しない場合は皮膚科へいってみるのもひとつの選択肢だと思います。
ただ、乾燥からくるかゆみは室内の湿度やお風呂の入り方などを見直すだけで改善することもあるので、皮膚科を訪れる前に住環境を見直してみることをおすすめします。
―なるほど!「肌の乾燥を防ぐ」というとついつい保湿剤を塗ることだけを意識してしまいがちですが、肌がさらされる環境やお風呂の入り方を見直すだけでも改善ができるのですね!
次回は、「乾燥しない肌を目指すには」について教えていただきたいと思います。
- タナベ皮フ科クリニック院長
田辺 和美 先生
- 慶應義塾大学医学部卒業、真皮エラスチン研究において医学博士号取得。
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医。
ニキビやアレルギーなどの皮膚疾患から女性特有の肌の悩みや美容に関する相談まで幅広く対応。薬による治療だけでなく、食生活やライフスタイルの改善アドバイスにより、根本的な治療を目指す。
タナベ皮フ科クリニックHP
- 小林未佳
- 関西学院大学理学部卒業後、化粧品メーカーにおいて研究・開発に従事。その後、化粧品の商品企画・マーケティングへと転身。2018年、これまで培った化粧品や美容の知識を発信するべく、ライターとして独立。
All About Beauty 公式ガイド。
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