―赤ちゃんのスキンケアについて教えていただきたいのですが、赤ちゃんは生まれていつごろからスキンケアをはじめればよいのでしょうか?またその頻度についても教えてください。
赤ちゃんのスキンケアですが、生まれてすぐにはじめたほうがよいですね。
特に、生後1か月以内の新生児の肌は未熟で、バリア機能も未発達。
うるおいが少なく、とっても乾燥しやすい状態です。
だからこそきちんとスキンケアしないといけません。
表皮が完全に形成されてくるのは3歳頃だといわれているので、少なくともその間はきちんとスキンケアをしてバリア機能を保ってあげないと肌トラブルを起こしやすくなってしまいます。
また頻度ですが、1日2回くらいがよいかと思います。
お風呂上がりと朝のお着換えの時に全身の保湿ケアをするとよいですね。

あとは、おむつ替えをしたときに拭いた後、拭きっぱなしにするのではなく、その部分を保湿してあげるのもいいですね。
また、ミルクを飲んだり離乳食を食べた後に口の周りを洗ったり拭いたりした後、そのままにしてしまうと乾燥しやすくなってしまうため、洗った部分だけで構わないので保湿してあげたほうがよいですね。
―赤ちゃんの保湿ケアには何を使えばよいですか?皮膚科医で処方される保湿剤のほうがよいとか、ありますか?
市販の乳幼児用の保湿剤で大丈夫ですよ。
選ぶポイントとしてはパラベンや香料、着色剤など不要なものが入っていない製品がよいですね。
赤ちゃんの肌はバリア機能が弱いため、そういった不要なものが皮膚内に入り込みやすい状態。
だからこそ、保湿のため以外の成分は極力含まれていないほうがよいですね。
病院で処方される保湿剤の方が、市販のものよりも優れている、ということではありません。
アトピー性皮膚炎やドライスキンの傾向があったりすると、皮膚科医に診てもらって適切な保湿剤を処方してもらったほうがよいですが、そうでなければ市販の保湿剤で問題ありません。
―保湿剤にも乳液タイプやクリームタイプなどいろんな種類がありますが、どのように選べばよいのでしょうか?
美容液のような少しとろみのあるローションタイプから乳液タイプ、クリームや軟膏のようなこってりとしたものまで、いろいろとありますよね。
もしお子さんがべたつきを嫌がるのであれば、ローションのようなサラッとしたタイプがよいかと思います。
ただ、お肌が乾燥している場合はローションだと保湿力がやや弱いので、クリームタイプを使ったほうがよいでしょう。
乾燥しやすい部位はクリーム、それほど乾燥が気にならない部位はローションなど、塗布する場所によって使い分けても効果的だと思います。
あとは、季節によっても剤型を変えるといい場合もありますね。
また、食べこぼしが多い時期、食べこぼしによる肌荒れ、また食べこぼしをゴシゴシふき取ってしまって口周りが荒れてしまうことがあるかと思います。

その防止策として、食事の前にワセリンを口周りに塗っておくとよいですね。
ワセリンが肌を守ってくれるので、食べこぼしによる肌荒れを防ぐことができます。
食事後はそのまま洗い流すことができるので、ゴシゴシとこする必要もなくなります。
洗い流した後は保湿剤で保湿してあげてくださいね。
「アトピーの基礎知識-1.アトピーってどんな病気?」でもお話し通り、アレルギーは皮膚を通して発症するケースが多くあります。
口周りの皮膚が荒れていると、食品が荒れた皮膚を通して体内に入り、食品アレルギーを発症するリスクがあるといわれています。
それを防ぐためにも、食事の前にプロペトなどのワセリンでバリアしておいてあげることは、肌荒れだけでなく食品アレルギーの発症予防にもつながると考えられます。
―赤ちゃんのときにスキンケアしておくとアトピーの発症率が下がるということを聞いたことがあるのですが、それは本当ですか?
出生直後から保湿剤できちんとスキンケアをすると、アトピー性皮膚炎の発症率が下がるというデータがあります。
確かにきちんとスキンケアをして、未熟なバリア機能を補って整えてあげることで、アトピー皮膚炎発症のリスクは下げることができると思います。
ただ、アトピー性皮膚炎は以前もお話した通り、いろんな要因が複雑にからんで起こる疾患のため、乳幼児期にスキンケアをしておけば発症しない、とは断言はできません。
とはいえ、ただ、新生児の頃からきちんとスキンケアをする、ということは非常に重要だということには変わりありません。

また、全身くまなくスキンケアしてあげることで、ママやパパとのスキンコンタクトが増え、親と子の心を通じさせるという意味合いもありますよね。
スキンケアを「義務」として行うのではなく、リラックスして「愛おしむ」気持ちで楽しくやってあげると、尚よいかと思います。
- タナベ皮フ科クリニック院長
田辺 和美 先生
- 慶應義塾大学医学部卒業、真皮エラスチン研究において医学博士号取得。
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医。
ニキビやアレルギーなどの皮膚疾患から女性特有の肌の悩みや美容に関する相談まで幅広く対応。薬による治療だけでなく、食生活やライフスタイルの改善アドバイスにより、根本的な治療を目指す。
タナベ皮フ科クリニックHP
- 小林未佳
- 関西学院大学理学部卒業後、化粧品メーカーにおいて研究・開発に従事。その後、化粧品の商品企画・マーケティングへと転身。2018年、これまで培った化粧品や美容の知識を発信するべく、ライターとして独立。
All About Beauty 公式ガイド。
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