―私はIC.U HAマイクロパッチを目もとによく使用しています。貼って寝た翌朝は、マイクロニードルがついている部分だけでなく、目もと全体にふっくらとしたうるおいを実感できるのですが、効果はマイクロニードル部分だけではないのですか?
皮膚の中に入ったマイクロニードルは、四方八方へ拡散してゆきます。
その様子を撮影した写真が下記になります。
赤く見える部分がヒアルロン酸です。

拡散の様子が見やすいよう、商品化されているものよりも長いマイクロニードルを、モデル皮膚に使用した様子を高感度カメラで撮影したものです。
縦方向だでなく、横方向にも浸透しています。
ニードルが実際に皮膚に刺さっている部分だけでなく、その周囲の皮膚にまでヒアルロン酸の保湿効果がある、ということです。
ヒアルロン酸は水を吸収して膨らんで、拡散していきます。
そのため、皮膚の下方向だけでなく、横方向にもうるおい効果が波及するのです。
これは、ヒアルロン酸の濃度依存性によるものです。
ヒアルロン酸は濃度の高いところから低いところへ広がる性質をもちます。
水が高いところから低いところへ流れるようなイメージですね。
そのため、皮膚に入ったヒアルロン酸は、ヒアルロン酸濃度の低いほうへ自然に拡散していくのです。
ヒアルロン酸のニードルが物理的にアプローチするのではなく、皮膚内で溶けだして濃度の低いほうへと拡散・浸透することにより、高い効果を得ることができます。
―このマイクロニードルはどのように作られるのですか?
鋳型(いがた)という「型」を用いて製造しています。
具体的には、型に溶液を流し込み、乾燥させて型を外すという方法です。
この方法を「鋳型製法」といいます。
鋳型製法では、均一で繊細な製品を製造することが可能です。
いろんな製法を試した結果、品質コントロールや生産性の最もよい鋳型製造を採用しています。
日本の鋳型製造技術は素晴らしく高いため、マイクロニードルという非常に繊細な型をつくることができます。
コスメディ製薬では、型も自社製造しています。
化粧品として最適なピッチや深さなど、繊細なコントロールの上に作成されている型です。
―あと、マイクロパッチの粘着部分の秘密を教えてください!私は絆創膏などを貼ると粘着部分ですぐに皮膚が荒れたりかぶれたりしてしまうのですが、このパッチは全く荒れません。それどころか、剥がした後、しっとりうるおった気がします。なにか秘密はあるのでしょうか?
パッチの粘着部分は、医薬品のオイルゲルという技術を応用し、ポリマー(高分子)のネットワークの中にたっぷりのオリーブオイルやオリーブスクワランを含ませたものでできています。
顔、それも繊細な目もとに貼ることもあるということで、肌へのやさしさを念頭に開発しました。
その結果、肌に密着するエモリエントシートともいえるような肌にやさしい素材を開発することができました。
水分を与える、というよりも、皮膚から蒸散した水分を逃がさずにパックする効果ですね。
皮膚から水分を逃すことなく守る、といったイメージです。
「化粧品」ということを念頭に置き、肌へのやさしさ・効果感のバランスを繊細に調整し、開発することができました。
―3回にわたり、マイクロニードルの開発秘話をお聞きしました。今後のマイクロニードル技術の展望をお聞かせいただけますか?
我々は製薬会社ということもあり、マイクロニードルの医薬品としての活用を目的としています。
例えば、自己注射が必要な糖尿病患者の方へ、貼るだけで注射の代替となりうるものが開発できれば、自分で注射する必要がなくなりますよね。
そのようにマイクロニードル技術をあらゆることに応用し、患者様のQOL(Quality Of Life:生活の質)の向上、それだけでなく医療従事者にも役立てることがたくさんあると考えています。
新時代にふさわしい、簡便かつ効果的な医薬品をマイクロニードル技術を用いて開発していきたいと思います。
―素晴らしいですね!マイクロニードル技術が医療の世界で活躍する日を楽しみにしています!ありがとうございました!
- 小林未佳
- 関西学院大学理学部卒業後、化粧品メーカーにおいて研究・開発に従事。その後、化粧品の商品企画・マーケティングへと転身。2018年、これまで培った化粧品や美容の知識を発信するべく、ライターとして独立。
All About Beauty 公式ガイド。
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