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2022.05.30

美人の教科書 72話 心を満たすスキンケア「しなやかに歳を重ねる」

美人の教科書は、絶対知っていると得をする美容情報をお伝えするコーナー。 ちょっと視点を変えたアイデアで、あなたのキレイを応援します!


ありのまま、という豊かさもある。

美容講習会などの内容を相談している時、よく担当者にいいですね!と言われるテーマがあります。それは「若々しく輝いて見えるメイク」。加齢によって現れる、表情や肌、造形の変化を知って、ナチュラルでありながらさりげなくフレッシュな印象をつくるメイクでした。今でも小分けにしてよくお話させていただいています。

ところが最近は「ありのままの自分」でいることが、ストレスがなく自分らしいのでは?と思う方も増えてきたように思います。言い換えると、今の自分を受け入れ、その中で自分の好きな部分を素直に表現するというメイクアップです。メイクで行うテクニックが根本から変化したわけではありませんが、心持ちが違うのです。前者が加齢によって失われたものをメイクアップで補うといった趣旨があるのに対し、後者は加齢によって新しく得ることができた自分らしさをメイクアップによって魅力的にしつらえる訳です。

私が美容を学び始めたころ、尊敬する先生がこうおっしゃっていました。「嫌いなところをメイクアップによって修正したところで、人並みなキレイさは手に入るかもしれないけれど、魅力的な人にはなかなかなれないのよ。人にはない自分らしさに気づき、そこを伸ばしてみる。するとそれがあなたの魅力となって輝くのです。」と。
加齢によって生じた現象をカバーするのは、もちろん悪いことではありません。けれど目尻のシワは、どのように生きてきたかの証となるあなたの財産。微笑んだ時に下がる目尻は、えもいわれぬ温かい表情を作り出しています。パンと弾き返すようなツヤはなくても、何もかも包み込むような柔軟な肌がある。フェイスラインのもたつきは、どこか思いやりを感じさせる安心感があります。下がりがちな口角を上げようと努めていることこそ、自然の営みにあらがうことなく誠実に生きてきた証なのです。
美容はあなたのキレイを作ること以上に「応援してくれるもの」。私はこう思っています。明るく前向きに生きるためのルーティンのひとつにスキンケアがあり、メイクアップを施すことで平穏な朝がスタートすると。

美しいものには法則があります。左右対称だったり、黄金比だったり、カラーバランスだったり。美しく整ったものには均整の取れたバランス感覚が備わっているということです。
けれど思わず二度見してしまう美しさには、バランスでは語れない個性的な魅力が備わっています。その美しさに気づくためには美しいものをたくさん見聞きし、内面を磨き、自ら輝きだすことが必要なのかもしれません。今そこに存在する自分を受け入れ、日々追われている生活のあり方を見直してみる。これといって新しいことをするわけではなくても、美しいものを「ああ、きれいだな」と思う感覚の回路を、いま今一度見直し開いてみましょう。小さなことでもいいのです。



先日ヒヤシンスの鉢植えを買ってきて、土を落とし水耕栽培にしました。日に日に白い根が伸び、硬かったつぼみがゆるみほんのりと色づいていくさまは、成長の過程を共有しているようでうれしくなります。暖かくなるとメダカが産卵します。朝早くに水槽を覗いてみると、突然1㎜くらいのメダカの赤ちゃんがピンピンと飛び跳ねるように泳いでいます。そんな些細なことが幸せにつながっているのだと感じます。
これまで自分の顔に向き合い、思わず笑みがこぼれるようなエッセンスをご紹介したいと思い書いてきましたが、皆さんの中に誇れる部分は確実にあります。それに気づいていただければ、もうそれで本望なのです。

自然界の美しさへの気づき。人という造形の美しさ、人と違うご自分の顔の魅力を再発見し、自分らしいありのままの美しさに気づき共存する。そのことの豊かさや快適さを受け入れる支度を、そろそろ本気で始めてみませんか。しなやかに歳を重ねるために。

長い間、美人の教科書をご愛読いただきありがとうございました。今回が最終話となります。知っていると得をする美容情報をお伝えし、私が今まで大切にしてきたことや自分を好きになれるポイントなど自由に書かせていただきました。皆さんが笑顔で過ごせる時間が増えますように。そしていつかまたどこかでお会いできますことを楽しみにしております。

コーセー美容開発部BCU 林みゆき
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